上手な遺産分割②「とりあえず預貯金だけ」の遺産分割をお勧めしない理由(その2)|各務原市の司法書士

前回の記事では、預貯金だけを先に分けてしまうと「遺産分割協議のやり直し」や「不動産放置のリスク」が生じることを解説しました。

しかし、実務上「預貯金だけを先に分けるべきではない」理由はそれだけではありません。特に「相続税の申告期限」「個人の相続税額の計算し直し」、そして「現金の持つ役割」という観点から、さらに大きなリスクが潜んでいます。

岐阜市・各務原市で数多くの相続・遺産分割に携わる草の根事務所の司法書士が、その理由を詳しく解説します。


1. 相続税の申告がややこしくなり、個人の税額計算をやり直すハメに

相続税の申告が必要な場合、すべての財産(不動産、預貯金、有価証券など)の評価額を確定させ、全体でいくらの財産があるかを計算した上で申告書を作成しなくてはなりません。

もし、預貯金だけを先に分割して動かしてしまうと、以下のような問題が発生します。

  • 申告と分割の足並みが乱れる: 相続税の申告期限(被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内)は待ってくれません。全体をトータルで把握できていないと、税理士との連携や納税資金の確保に支障をきたします。
  • 個人の相続税額の計算し直しが発生する: 誰がどの財産をどれだけ取得するかによって、最終的に支払う「個人の相続税額」が大きく変動します。一部の預貯金だけで勝手に分割を済ませてしまうと、後から全体の遺産配分が変わったときに個人の相続税額の計算をすべてやり直し、修正申告や追加の税金・手続に追われることになりかねません。
  • 特例が使いづらくなる: 「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」など、どの財産を誰に紐付けるかによって使える節税の特例の有利不利が変わります。一部だけで勝手に動いてしまうと、最適な税金のコントロールができなくなります。

2. 現金・預貯金は「不公平を調整するための切り札」である

相続において、現金・預貯金には非常に重要な役割があります。それは「分けにくい財産(不動産など)のバランスをとるための調整役」という側面です。

たとえば、実家の土地と建物(評価額3,000万円)を長男が相続する場合、次男や長女に分けるための現金がほとんどないと、「長男だけが不公平に多くの財産をもらった」として、一気に揉め事に発展します。

  • 先に預貯金を使い切ってはいけない理由: もし預貯金を先にみんなでバラバラに分けてしまうと、あとから「土地を相続する人から他の人へ代償金(金銭)を支払う」という調整ができなくなってしまいます。 現金・預貯金は、相続人全員の不公平感を埋めるための「調整弁(クッション)」として、最後まで残しておくべき財産なのです。

3. まとめ:相続(遺産分割)は「全体を見渡すトータルバランス」が肝心

「とりあえず手元に現金が欲しい」「分けるのが簡単そうだから」という理由だけで、預貯金から安易に手をつけてしまうと、後々の相続税の計算し直しや遺産のバランス調整で手詰まりになってしまいます。

相続を円満かつスムーズに完了させるためには、個別の財産をバラバラに考えるのではなく、すべての財産をテーブルに載せてトータルでデザインすることが一番の近道です。

「我が家の場合は、どの財産からどう手をつけるべき?」「不動産と現金をどうバランスよく分けたらいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

岐阜・各務原の草の根事務所では、皆さまの状況に合わせたトータルなサポートを行っております。

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