【各務原市の現実】防衛省が土地を高値で買う裏で、町が静かに死んでいく理由

航空自衛隊岐阜基地を抱える各務原市。街の歴史や発展と自衛隊は切っても切り離せない関係にありますが、基地周辺のエリアでは今、私たちが目を背けづらい現実が進行しています。

それが、騒音対策や周辺整備に伴う防衛省による土地の買い入れ(移転措置事業など)と、それに伴う町の「スポンジ化(空洞化)」です。

国が相場より高値で買い取ってくれるという背景があるなか、なぜそれが町を「静かに死にゆく場所」に変えてしまうのか。そして、こうした現実に対して行政が取りうる手段はあるのか。現場を見てきた司法書士の視点からお伝えします。


1. 防衛省が結果として「相場より高く」土地を買っていくという現実

航空機の騒音や安全性の確保が必要な区域では、国(東海防衛支局など)が希望者からの建物や土地の買い取りを行っています。

ここで大きなポイントとなるのが、防衛省の土地買い取り価格は「一般的な市場の売買相場よりも高値がつくケースが多い」という点です。

  • 高額買取のカラクリ: 国の事業であるため、通常の不動産市場のような「買い手がつかない」「価格が叩かれる」といったリスクが少なく、適正評価や手厚い補償、税制上の優遇措置などが加わって買い取られます。
  • 住民にとっての選択: 「長年、騒音に悩まされてきたし、この価格で国が買い取ってくれるなら、これを機に別の静かな街へ引っ越そう」と、所有者が売却を決断する大きな理由になっています。

個人や一家族の生活再建というミクロな視点で見れば合理的ですが、地域全体のマクロな視点で見ると、ここから深刻な「町の衰退」が始まります。


2. 点と点が消え、町が「静かに死んでいく」メカニズム

防衛省に土地が買い取られ、建物が次々と解体されると、町に何が起きるでしょうか。そこに残るのは、ポツポツと生まれた更地です。

  1. 「スポンジ化」する住宅街: 隣の家が買い取られて更地になり、少し離れた家も消える。町の中に誰もいない空間が生まれ、まるでスポンジのように中身が抜け落ちていきます。
  2. 若い世代へのバトンタッチが途切れる: 本来であれば、こうした住宅街や空いた土地に若い世代が家を建て、子どもの声が響いたり、新しい家族の営みが生まれたりするはずの場所です。しかし、国に買い取られた土地に再び民間の家が建つことはありません。
  3. コミュニティの崩壊と利便性の低下: 人が減ることで、地域の自治会や町内会、防災といったつながりが維持できなくなります。商店や生活インフラも先細りし、「住みづらい町」になってさらに人が流出する――という負のスパイラルに陥ります。

新しい活力が流れ込むことなく、ただ建物が消えていき、草木が生い茂る空き地ばかりが増えていく。それは、町が急激ではなく、じわじわと「静かに死んでいく」光景に他なりません。


3. 個人としての選択は仕方ないとして、行政にできることはないのか?

「騒音や就職先を考えれば、ここから離れて国に土地を売るという個人個人の判断を責めることはできない」――それはその通りです。では、各務原市などの自治体は、このまま町がスポンジ化していくのを指をくすねて見ているしかないのでしょうか?

実は、国による土地買い上げが進むエリアにおいて、自治体が主導して取り組むべき、あるいは検討しうるアプローチはいくつか考えられます。

  • 居住エリアの集約とコンパクトなまちづくりの推進: 防衛省が買い取った土地が点在してスカスカになった地区に対し、ただ人が減るに任せるのではなく、インフラや生活利便性を効率的に維持できるエリアへ居住を誘導する「コンパクトシティ構想」を取り入れる。住民が安心して長く住み続けられる居住空間を計画的に再構築するアプローチです。
  • 都市計画や用途地域における建築・開発の規制: スポンジ化が進むエリアで無秩序な歯抜け状態が拡大するのを防ぐため、建築規制や適正なゾーニングの見直しを行う。これ以上居住環境の悪化が進まないよう、あるいは将来的な土地の乱開発を防ぐための法的なコントロールやガイドラインを設ける。
  • 市内での移住・定住を促すインセンティブの強化: 「基地周辺から出ていく人」をただ見送るのではなく、市内の別の安全・快適な住宅エリアへスムーズに転居できるよう、自治体として住宅取得補助や手厚いサポートを組み合わせることで、市外への人口流出を防ぐ。

個人の選択の自由を守りつつも、「町全体がどのように朽ちていくのを防ぐか」という長期的なビジョンと、規制や誘導を含めた具体的な処方箋を、行政がもっと前面に出して議論していく必要があるのではないでしょうか。「騒音や生活環境の厳しさを考えれば、国に土地を売って出ていく個人個人の判断を責めることはできない」――それはその通りです。では、各務原市などの自治体は、このまま町がスポンジ化していくのを指をくすねて見ているしかないのでしょうか?

実は、国による土地買い上げが進むエリアにおいて、自治体が主導して取り組むべき、あるいは検討しうるアプローチはいくつか考えられます。

  • 国から買い取り跡地の「有効活用」に関する譲渡・連携の仕組みづくり: 防衛省が買い取った土地(国管轄地)が点在するだけで放置されるのではなく、コンパクトシティ構想に基づく公共スペースとして再利用する計画的アプローチ。
  • 周辺エリアへの移住・定住促進のインセンティブ: 「基地周辺から出ていく人」をただ見送るだけでなく、市内の別の安全・快適な住宅エリアへスムーズに転居できるよう、自治体として企業誘致と就業あっせん、住宅取得補助や手厚いサポートを組み合わせることで、市外への人口流出を防ぐ。
  • 「点在する空き地」の面的管理とゾーニング: スポンジ化が進む地区において、今後どのような都市計画を描くのか。ただ人が減るに任せるのではなく、コミュニティの核となるエリアを絞り込み、インフラを維持する「集約型のまちづくり」への舵取り。

個人の選択の自由を守りつつも、「町全体がどのように朽ちていくのを防ぐか」という長期的なビジョンと具体的な処方箋を、行政がもっと前面に出して議論していく必要があるのではないでしょうか。


4. 手放すときに直面する「相続と権利」の落とし穴

「実家の土地を手放そうか」と考えたとき、行政や国とのやり取りの前に、思わぬ足かせとなるのが不動産の「権利関係(名義)」です。

  • 「亡くなった祖父の名義のまま」だったケース: いざ売却手続きを進めようとした段階で、家や土地の名義が昔の祖父のままであることが発覚。相続人が何人もいて、全員の同意やハンコを集めるのが一苦労になるトラブルが後を絶ちません。
  • 共有持分の問題: 遠方に引っ越したきょうだいで土地を共有しており、手続きを進めるための話し合いがまとまらないケース。

土地を手放して整理するにしても、親族間で余計な揉め事を起こさないためには、日頃から「不動産の名義」をクリアにしておくことが極めて重要です。


5. 町の形が変わるとき、私たちが備えておくべきこと

各務原市のなかでも、時代とともに地域の表情は大きく変わり続けています。開発が進むエリアがある一方で、こうした土地の買収と高齢化の波によって、かつての賑わいを失っていく地区があるのもまた事実です。

  • 「実家が基地の周辺にあるけれど、将来的に売却や活用をどうすべきか悩んでいる」
  • 「実家の名義が古いままになっているので、整理しておきたい」

不動産の処分や、それに伴う相続の手続きについて、少しでも不安を感じたら、いざという時に慌てないよう、形になる前にお気軽にご相談ください。当事務所は、各務原市に根ざす専門家として、皆様の大切な財産とこれからの暮らしの整理をお手伝いいたします。

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